GO FOR KOGEI 2025
GO FOR KOGEI 2025

ABOUT

GFKについて

New Perspectives on Craft
form Hokuriku

北陸発 新たな工芸の発信

GO FOR KOGEIは、ものづくりが古くから受け継がれる北陸から、新たな工芸の見方を発信するプロジェクトです。2020年に開始して以来、地域の歴史・風土を体現する町並みや社寺を会場にした展覧会やイベントのほか、工芸を巡る今日的な課題と可能性について議論を深めるシンポジウムなどを開催してきました。
 われわれが「KOGEI」という言葉を用いる際に、それが意図するところは新たなジャンルを展開することではありません。むしろ、歴史的に規定されたジャンルを通貫する、オルタナティブな評価軸を提案することにほかなりません。
 近代化のなかで台頭した「美術」、その対として分離された「工芸」というジャンルの力学は今なお根強く、私たちのモノの見方を規定しています。そこに、素材・技法・用途といった紋切型の基準が加わることで、その構造はより強固なものとなっています。この枠組みを再考すべく、これまで工芸的なものとみなされてきた要素を再検証し、ジャンルを超えてもなお、そこに通底するものとは何かを模索してきました。
 この問いに対して一義的な答えを出すことは困難ですが、完成された作品の素材や技法からではなく、それらを通して作者がモノと向き合うアプローチの中に見出すことができるのではないかと考えています。コンセプトを起点に制作を進めることのほかに、素材や技法をもとに手の内から表現が練り上げられることもあるでしょう。後者を仮に「工芸的アプローチ」というのであれば、その視点からさまざまなモノ作りをながめることで、これまでとは全く異なる展望が見えてくるのではないでしょうか。こうした評価軸の転換は、既存のジャンルを解体するのではなく、ゆるやかに解きほぐす手立てになります。
GO FOR KOGEIでは、既成概念にとらわれない豊かで広がりをもった姿を「KOGEI」という言葉とともに提示しながら、これからの工芸のあるべき「場」をさまざまな実践を通して作り出していきます。

コムロタカヒロ《Dog Dragon》2023年 展示風景「GO FOR KOGEI 2023」(桝田酒造店 満寿泉、2023年)Photo: Watanabe Osamu

THEME

GFK2025のテーマ

工芸的なるもの

GO FOR KOGEI 2025では、「工芸的なるもの」というテーマのもと、作家や職人が素材・技法と向き合う態度から生まれるさまざまな実践を通して、それらが作り出す多様な暮らしの姿を提案していきます。
 民藝運動の主唱者として知られる柳宗悦(1889–1961年)は、論考「工芸的なるもの」*のなかで、車内アナウンスの抑揚や理髪師の鋏さばきを「工芸的なやり方」だと記し、人の行為あるいは態度にさえ工芸性を見出しました。柳にとって工芸的なものとは、個人の自由な表現というよりも、社会全体で共有される美意識や様式に基づいたものであり、そこに美や価値が宿ると考えていました。有形無形を問わず、ものごとを工芸的と捉えることができるならば、「工芸」は今日私たちが想定する以上に社会とつながり、広がりをもったものとして立ち現れてきます。
 一方で、社会全体が、共有してきたものを失っていったとしたら、柳の提唱した「工芸的なるもの」という概念は通用するのでしょうか。ある意味で、モダニズムは柳の考えとは全く逆の方向へと向かってきたと言えるかもしれません。こういったモダニズムの末期とも言える今日において、柳の概念を手掛かりに工芸と社会との関係を考えることには一定の意味があるでしょう。
 GO FOR KOGEI 2025では、作家や職人の工芸的態度を起点にして、制作された作品に留まらず、その過程で生まれる他者との関係性、作品を介して開かれるコミュニケーションや暮らしの場面といった社会的状況にも目を向けていきます。また、ある時には暮らしを下支えし、ある時には形作り、ある時には彩る、同じ素材が持つ多面的な展開も紹介します。こうした広がりの中に「工芸性」を想定することには、現在の、またこれからの工芸とアートの役割を見出す契機が潜んでいることでしょう。

*『工藝』第8号(1931年)所載

秋元雄史(アーティスティックディレクター)

HIGHLIGHT

ハイライト

工芸的アプローチが生み出す多面的な創作

18組の多様な表現や活動を通して、「工芸的アプローチ」によって展開される多面的な創作のかたちを紹介します。素材や技術と真摯に向き合う態度に着目することで、既成概念にとらわれない、豊かで広がりのある表現の可能性を提示します。

「工芸的なるもの」に通底する価値観

柳宗悦が提唱した「工芸的なるもの」という概念を手がかりに、日常のあらゆる事象に工芸性を見出す視点を提示します。そこから、現代社会において私たちが共有している美意識や価値観とは何かを問い直します。

さまざまな関係性を探るキュレーション

作品そのものにとどまらず、制作過程で生まれる他者との関係性や作品を媒介にしたコミュニケーションなど、モノの背後にあるさまざまな関係性に着目してキュレーションを展開します。展示やイベントを通して、人—モノ—社会のつながりを解きほぐしていきます。

OVERVIEW

概要

GO FOR KOGEI 2025

工芸的なるもの

会期|2025 年9 月13 日(土)‒10 月19 日(日)[37 日間]

休場日|水曜

時間|10:00-16:30(最終入場16:00)

会場|富山県富山市(岩瀬エリア)、石川県金沢市(東山エリア)

主催|認定NPO法人趣都金澤、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁

共催|富山県、富山市、北日本新聞社

後援|石川県、金沢市、JR西日本、富山地方鉄道、北國新聞社、富山新聞社、MRO北陸放送、石川テレビ放送、HAB北陸朝日放送、北日本放送、富山テレビ放送、チューリップテレビ

ARTISTIC DIRECTOR

アーティスティックディレクター

秋元雄史

東京藝術大学名誉教授

東京藝術大学名誉教授、金沢21世紀美術館特任館長、国立台南芸術大学栄誉教授、美術評論家。1955年東京生まれ。東京藝術大学美術学部卒業。1991年から直島のアートプロジェクトに携わる。地中美術館館長(2004–2006年)をはじめ金沢21世紀美術館館長(2007–2017年)、東京藝術大学大学美術館館長・教授(2015–2021年)、練馬区立美術館館長(2017–2023年)を歴任し、2021年から「GO FOR KOGEI」の総合監修・キュレーターを務める。主なプロジェクト・展覧会に、「スタンダード」「直島スタンダード2」(直島)、「第1–3回 金沢・世界工芸トリエンナーレ」(金沢、草屯・台湾)、「工芸未来派」(金沢、ニューヨーク・アメリカ)、「ジャポニズム2018」の公式企画として「井上有一 1916–1985 —書の解放—」(パリ、アルビ・フランス)、「あるがままのアート-人知れず表現し続ける者たち-」(東京)など。著書に『アート思考』(2019年、プレジデント社)など。

PRODUCER

プロデューサー

浦 淳

認定NPO法人趣都金澤 理事長

認定NPO法人趣都金澤理事長、株式会社浦建築研究所代表取締役。1966年金沢市生まれ。大学卒業後、建設会社を経て1993年株式会社浦建築研究所入社、2006年同社代表取締役に就任。金沢市の本社のほかに東京事務所と中国大連事務所を開設し、北陸で培ったきめ細かな設計をベースに国内外で設計活動を拡げる。同じく2006年にまちづくりのNPO「趣都金澤(しゅとかなざわ)」を設立し、理事長に就任。現在「認定NPO法人趣都金澤」として約260名の会員が在籍。「文化を基軸としたまちづくり」を目指し、思考すること(学習や提言)と実践すること(事業構築)を両輪に活動を展開している。主な活動として、KOGEI Art Fair Kanazawa、「工芸建築」展(金沢)、KUTANism(能美、小松)の企画・運営。建築作品として、忘機庵―ゆらぎの茶室(ベルリン・ドイツ)、金沢港クルーズターミナル、辻家庭園(金沢)など。iF DESIGN AWARD、日事連建築賞、JIA25年建築選、グッドデザイン賞、日本空間デザイン賞、石川デザイン賞、金沢市文化活動賞ほか受賞歴多数。

TEAM

チーム

  • プロデューサー|浦 淳(認定NPO法人 趣都金澤 理事長)
  • アーティスティックディレクター|秋元雄史(東京藝術大学 名誉教授)
  • エグゼクティブディレクター|薄井 寛(株式会社 ノエチカ)
  • コ・キュレーター|高山健太郎(株式会社artness)、髙井康充(株式会社 ノエチカ)
  • 会場設計|周防貴之(株式会社 SUO一級建築士事務所)
  • アートコーディネーター|金谷亜祐美(認定NPO法人 金沢アートグミ)
  • 制作|髙井康充、出坂温子、水脇梨菜(株式会社 ノエチカ)
  • 編集|坂本 綾、永野 香(有限会社 アリカ)
  • 翻訳|株式会社フレーズクレーズ
  • デザイン|中村遼一(カルチュア・コンビニエンス・クラブ 株式会社)
  • ウェブサイト|佐藤江美(株式会社 ニコットラボ)
  • 広報|星野優花(株式会社 ノエチカ)、那波佳子、西谷枝里子(リレーリレー LLP)、柳田和佳奈
  • SNS|柳田和佳奈
  • 写真|寺田征弘(株式会社 MARC AND PORTER)、池田紀幸(オハコスタジオ)
  • 動画|大谷内真郷
  • 企画運営|株式会社 ノエチカ